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白鳳時代の仏像4:橘夫人念持仏



(橘夫人厨子)

法隆寺所蔵の厨子には、玉虫厨子の他にもうひとつ、橘夫人厨子と伝えられるものがあって、そのなかに小さな阿弥陀三尊像が収められている。この厨子は藤原不比等の妻で光明皇后(聖武天皇の皇后)の母となった藤原三千代の念持仏を収め、婦人の個人的な信仰に用いられていたと推測されている。

厨子は斗張型で宮殿型の玉虫厨子とは異なっている。全体の高さは約263センチメートル、三尊像の高さが60センチセンチメートル余りである。


(橘夫人念持仏)

仏像は中央が阿弥陀如来、左側が観音菩薩、右側が勢至菩薩、いずれも金銅像である。阿弥陀如来は大きな蓮華座の上に坐しているが、大部分の阿弥陀像と異なって、この阿弥陀像は釈迦像と同じ印相をしている。すなわち右手が施無畏印、左手が与願印である。両脇の菩薩もそれぞれ蓮華座の上に立ち、観音は化仏、勢至は水瓶を宝冠に埋め込んである。それぞれ、慈悲と救済の象徴である。

仏像の後ろには、供養天人像の浮彫を施した衝立がおいてある。蓮池から蓮枝がのび、蓮の花弁の上には浄土に生まれ変わったばかりの仮仏が休息しているという絵柄である。阿弥陀信仰が本格化するのは平安時代にはいってからであるが、すでにこの頃から信仰を集め始めていたことを窺わせる。

仏像の表現はいかにも人間的で、白鳳時代末期の特徴を感じさせる傑作である。






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