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当麻寺の塑像と乾漆像



(当麻寺金堂弥勒仏 塑像 像高約220cm)

奈良県の当麻寺には現存する日本最古の塑像と乾漆像がある。本尊の弥勒仏(塑像)と従者の四天王像(乾漆像)である。塑像は685(天武13)年に開眼し、当初は左右に脇侍を従えていたと推測される。また、四天王像は本尊よりやや遅れて作られた。本尊仏も四天王像も1180(治承四)年の兵火で損傷したため、補修の跡が多く残っている。

本尊仏は台座の上に結跏趺坐し、釈迦と同じ施無畏・与願印をとっている。現在では弥勒仏とされているが、当初からそうであったのか、或は釈迦であったものが途中から弥勒にかわったということも考えられる。

像の様式には隋や新羅の影響を指摘するものもあるが、同年に開眼した山田寺の仏頭同様に、我が国の内発的な様式だとする見方の方が強い。その見方によれば、これは天平仏の先駆者という位置づけになるが、天平仏には隋・唐様式の影響が指摘されるから、堂々巡りの議論になりかねないところがある。

台座は干乾煉瓦で中心部を固めた上に塑土を塗っていたと考えられる。本体は全体が塑像である。ただし、羅髪の部分は塑土が剥落したために、一部分木材で補充されているが、大部分は剥落したままである。


(当麻寺金堂増長天像 乾漆像 像高さ約216cm)

当麻寺の四天王像は我国最初の乾漆像であるとともに、四天王像としては法隆寺についで古いものである。上述したように損傷による補修の手が多く入っており、増長天像も、下半身、両襟、両袖が木材で補修されている。

四天王像と言えば、憤怒の表情をし、かつ身体をダイナミックに動かしているというものが多いが、この四天王像は、表情も穏やかで仕草も静かさを感じさせる。

乾漆像は天平時代以降さかんに作られることになるが、これはその先駆的な作品である。






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