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天平時代の仏像5:日光・月光菩薩像



(東大寺法華堂、日光・月光菩薩像)

東大寺法華堂の不空羂索観音像の前に置かれている一対の塑像は、寺伝では日光・月光菩薩といわれ、脇侍のように見えるが、もともとこの寺にあったものではなく、他から移転してきた客仏である。初めて文献に見えるのは江戸時代のことであるから、その当時に移転してきたものであろう。

日光・月光両菩薩は普通薬師如来の脇侍とされるが、薬師以外に釈迦やその他の仏の脇侍とされる場合もある。しかし、この一対の菩薩は、日光・月光菩薩の姿ではなく、明らかに天部の姿をしている。そこで、これらを梵天・帝釈天とする見方が有力になっている。梵天・帝釈天なら、不空羂索観音の本来の脇侍として、こういう場に相応しいし、実際この堂内には、本物の梵天・帝釈天が脇侍として仕えている。これらが日光・月光両菩薩と伝えられるようになったのは、この本来の脇侍と重複することを避けたからだろうと思われる。

客仏でありながら天平時代前期の作と断定されるわけは、塑像による表現や盛唐の様式を感じさせることからである。中心を木材で作り、その周囲に塑土をつけて形を取ったものである。塑土のつけ方は、最深部に荒い土を塗り、その上に麻屑などを混ぜたこまかい土を塗って形を整え、表面に紙を混ぜた細かい土を塗って仕上げるというものである。当初は表面に彩色を施していたと思われるが、今日では彩色は綺麗にはがれて、特に月光菩薩の場合には、透き通るような白さがあらわれている。

なお、像高は、日光菩薩が224.4cm、月光菩薩が226.1cm。これに対して本来の脇侍である梵天は402.8cm、帝釈天が404.6cmである。






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