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密教建築3:室尾寺



(室尾寺五重塔)

室尾寺は奈良時代末期の宝亀年間に興福寺の別院として創立された寺院である。それが真言宗に転じたのは、元禄年間のことである。したがって本来は密教寺院ではないが、山地にあって堂宇が自由に配置され、密教の山地伽藍の雰囲気を感じさせる。

建物は古いものが残っている。五重塔は室尾寺創建当時、奈良時代末期のものとされている。高さは16メートルばかりと、五重塔としては非常に小さい。しかしよく見ると、桧皮葺の緩い勾配の屋根や、軸部の組物、垂木など、いずれもがっしりとした構成になっており、見どころが多い。相輪は通常の竜車・宝珠に代えて宝蓋・宝瓶をつけた珍しい形をしている。


(室尾寺金堂)

室尾寺金堂は、創立よりやや遅れて平安時代初期に建てられたとされている。斜面を利用した建て方になっていて、建物本体の前面に礼堂と呼ばれる舞台状の構築物がせりだし、その床を束が支える構造になっている。このような建て方を懸崖造りといい、山岳寺院によく見られる形式である。

礼堂の部分は当初はなく、また屋根の形状ももともとは入母屋造りであった。現状のような形になったのは、寛文年間の大改修のときである。





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