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貞観彫刻14:教王護国寺の僧形八幡三神像



(教王護国寺僧形八幡三神像のうち男神、木造、像高109cm)

密教はいわゆる神仏習合を進め、その過程で、日本古来の神を仏の化身と考える本地垂迹説のようなものが生まれてきた。それに伴い、仏像の中に、日本古来の神に僧形をさせたもの(神仏習合像とでもいうべきもの)があらわれるようになった。教王護国寺に伝わる僧形八幡三神像は、その最も古いもので、かつ神仏習合像の代表的な作品でもある。

八幡三神とは主神の男神である八幡大菩薩(応神天皇)と、二人の女神(神功皇后と仲津姫)のことである。

男神は剃髪した頭に法衣をつけた僧形の形を取っている点で、普通の仏像とは著しく趣を異にしている。そこには、仏の超越性よりも、現世的な人間性を感じさせるものがある。これは、神仏習合が、神社側の都合から始まったという、歴史的な経緯を反映しているのかもしれない。つまり、本地垂迹の仏たちは、人間的な悩みの化身として観念されていたと想像される。


(教王護国寺僧形八幡三神像のうち女神、木造、像高114cm)

男神が僧形をしているのにたいして、女神のほうは、当時の高貴な女性の姿を反映しているものと考えられる。

なお、これら三つの像は、いずれも同一の木材から作られたと思われるが、それは、木に対する当時の日本人の感覚(憑代としての木)を反映しているのかもしれない。






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