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伴大納言絵詞 下巻



(伴大納言絵詞下巻、大納言邸の愁嘆場)

下巻では、舎人の証言にもとづいて、応天門放火の犯人が伴大納言であると断定され、検非違使が大納言を逮捕、大納言は刑一等を減じられて流罪となる様子が描かれる。

上の絵は、大納言が断罪されて、夫人を始め大納言家の人々が嘆き悲しむ様子を描いている。画面右手奥の部屋で、寝具にくるまっているように見えるのが大納言夫人。手前の部屋では、女たちが、さまざまなポーズをとって嘆き悲しんでいる。うずくまっている者、仰向けにひっくり返っている者、両手で目頭を押さえてオイオイと泣いているらしい者。なかには、胸をさらけ出して、瞑想にふけっている女もいる。

いかにもリアルな迫力を感じさせるこうした様子は、これ以前の日本の絵には見られなかったものだ。

(伴大納言絵詞下巻、連行される大納言)

検非違使の役人たちによって逮捕された大納言は、八葉車に乗せられて連行される。八葉車を牛に牽かせ、その周りを大勢の役人が取り囲んでいる。役人たちはみな帽子をかぶり、草鞋を履いている。ひとりだけ無帽の者がいるが、これは卑しい身分の牛飼いなのだろう。面白いことに、その牛飼いは背中に幼い子どもを背負っているようである。

車の中の大納言は、衣服の一部が垣間見えるだけで、表情はわからない。







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