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鳥獣戯画6(蛙の御本尊)




これ以降、左端までは、猿の僧正が蛙の御本尊にお経をあげるシーンが展開する。最初に出てくるのは二匹の猿。一人は千両箱を担ぎ、もう一人は銭を入れた袋を抱いている。この二人の行動は、その後のシーンとは必ずしも関連しているとは言えないので、もしかしたら、関係がない断片を、隣り合わせにつなぎ合わせただけなのかもしれない。彼らの向う側に描かれている草花の描写がリアルだ。



法会の場に集まってきた大勢の動物たち。数珠を持っている者もあれば、お経を読んでいる者もあり、または泣いている者もある。



この場面の中心は、仏壇の上に座っている蛙の御本尊と、それに向かってお経をあげている猿の僧正だ。蛙の御本尊は、結跏して蓮華の上に座り、印相を結んでいる。形からして来迎印だ。

この御本尊に向かって猿の僧正が、小枝をかざしながらお経を上げている。そのお経の威勢がいいらしいことは、猿の口から猛烈な息が出ていることから察せられる。

御本尊の後ろには、フクロウが枝にとまって、じっとこちらを伺っているが、それがどんなことを言いたいのか、よくはわからない。



絵巻の最後を飾るのは、猿の僧正。前の場面の続きなのかもしれない。周りに見える多くの品々は、お経のためのお布施のようだ。二匹の兎と二匹の蛙が、お布施の追加を運び込んでいるように見える。

全巻に出てくる動物たちの内訳を数えて見たら、兎が41匹で最も多く、蛙が25匹、猿16匹、狐11匹、猫3匹、鼠2匹、猪1匹、雉1匹、梟1匹で、合計103匹だった。







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