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平治物語絵巻1(三条殿夜討の巻)



(平治物語絵巻:三条殿夜討の巻1、縦41.4cm、ボストン美術館蔵)

今日に伝わる平治物語絵巻は、十三世紀の後半に成立したと考えられる。「看聞御記」等の記述によれば、永享八年(1436)には、十五巻の平治物語絵巻と同規模の保元物語絵巻が、比叡山西塔に保存されていたという。だが保元物語絵巻は散逸してしまい、平治物語絵巻もその一部が残っているに過ぎない。即ち、ボストン美術館所蔵の「三条殿夜討の巻」、静嘉堂文庫所蔵の「信西の巻」、東京国立博物館所蔵の「六波羅行幸の巻」である。そのほか「六波羅合戦の巻」の一部が残片として何か所かに散在している。

「三条殿夜討の巻」は平治物語の発端となった藤原信頼らによる白河上皇襲撃事件を描いている。信頼は不遇をかこっていた源義朝を語らって、清盛が熊野参詣のために京を不在にしたのをいいことに、上皇の御所三条殿を夜討ちし、上皇を二条天皇とともに内裏に幽閉した。

上の絵は、三条殿の夜討ちを聞きつけて集まってきた公達や廷臣たち。身分の高い者は車に乗り、低い者は徒歩である。


(平治物語絵巻:三条殿夜討の巻2)

この絵は、炎上する三条殿の様子を描く。中庭では襲撃した信頼側の兵士が、警護する上皇方の兵士に襲い掛かっている。また逃げ惑う上臈たちや、それに馬で襲い掛かる兵士の姿がリアルなタッチで描かれている。


(平治物語絵巻:三条殿夜討の巻3)

これは、上皇を車に乗せて内裏へ向かう襲撃者の一行。馬に乗った身分の高い武士は、つくり絵の手法で丁寧に描かれている。

この絵巻には、描き直しや付け加えの痕が見られることから、第一次企画として初発的に描かれたものだろうと推測されている。







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