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石山寺縁起絵巻:鎌倉時代の絵巻物



(石山寺縁起絵巻、巻二、源順の石山寺参詣)

石山寺縁起絵巻は、近江国石山寺の創建の経緯および霊験の数々を絵巻に仕立てたもので、全七巻からなる。巻一の記述によれば、縁起本文は正中年間(1324~26)に成立したが、絵巻の方は、多くの歳月をかけて作られた。

巻一から三までの三巻については、鎌倉時代後期の画家高階隆兼の技法に近く、成立したのは14世紀後半だと推測される。巻四は、明応三年(1497)に成立し、詞書を三条西実隆が、絵を土佐光信が書いた。巻五は、巻一から三までと同じ時期の制作と思われるが画風は異なる。また、巻六と七は、徳川時代になって、文化二年(1805)に成立した。松平定信の尽力により、谷文晃も制作に協力した。

上の絵は、巻二から。源順の石山寺参詣の一幕。順は、万葉集の訓読をしていたところ、中々読めない字があったために、手がかりを求めて石山寺に参詣した。ところが、石山寺では具体的な手がかりが得られないままで、引き返していくこととなった。だが、大津の浜を通りがかった際に、馬子の言葉からヒントを得て、訓読に成功することができた。この絵は、順と馬子が出会う場面を描いたものである。


(石山寺縁起絵巻、巻三、菅原孝標女の石山寺参詣)

これは、巻三から。更級日記の作者菅原孝標女の石山寺参詣を描いたもの。彼女は二度石山寺に参詣しており、その様子を更級日記のなかでも取り上げている。日記本文では、嵐の中を参詣したということになっているが、この絵には、そういう様子は感じられない。







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