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東大寺南大門仁王像(阿像):運慶と鎌倉彫刻




東大寺南大門仁王像のうち阿像については、一応快慶が担当したと推測されているが、両像のコンセプトにはかなりの共通性が見られるので、運慶による全体的な目配りがあったものと思われる。運慶が、全体に共通する方針を立て、それに従った形で快慶も制作にあたったというのが実際ではないか。

軸足から肩先まで上下に一本支柱を通し、その周囲に寄木する方法は、吽像と同じである。また憤怒の表情、筋肉の盛り上がり、衣文の表現などにも、両像の共通性が見られる。

吽像は、左手で棍棒を持ち、右手を前に突きだしていたが、こちらは逆に、右手で棍棒を持ち上げ、左手を前に突きだしている。とはいっても、左右の対称性にはあまりこだわらず、これはこれで完結した躍動感を表現している。しかし、全体的な印象としては、吽像のほうの躍動感が勝っているようである。

阿像の右腰部分の矧木内に、楽阿弥陀仏以下の結縁者の名が記されている。これは、重源による勧進に協力した人々の名だろうと思われる。この勧進には西行も協力しているが、その名もここに含まれているのだろうか。



これは、上半身の部分を拡大したもの。眼を大きく見開いて、憤怒の表現をしているところは吽像と同じだが、口を開いていることで、印象がやや緩慢になっている。

(木造、寄木作り 像高842cm 東大寺南大門)






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