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維摩居士像:定慶




定慶は、運慶や快慶と同世代の仏師で、作風からみて慶派に属すると見られる。しかし、その作品が収められたのが興福寺と春日大社に限られ、また僧綱位についた形跡がないことから、慶派の主流ではなかった可能性が高い。その作風は、慶派の特徴である写実を基本としながらも、細部へのこだわりや装飾性等など、彼独自のものを指摘できる。

維摩居士は、文殊菩薩と法論をかわしたことが維摩経に見える。この像はその際の維摩居士の様子をイメージ化したものだ。まっすぐに相手を見つめ、両手で身振りをまじえながら、論争する様子がリアルに表現されている。宋画の維摩像を手本にしたとの指摘がある。

この像は、興福寺の東金堂に納められたが、同じ堂内には、論争相手の文殊菩薩の像も安置されている。だがこちらは定慶の作ではない。慶派に属するほかの仏師の手になるものだ。

木造寄木作りで玉眼。台座には獅子や牡丹の浮き彫りが施されている。獅子は文殊菩薩の使者だ。

(木造寄木作り彩色 像高88.1cm 奈良興福寺東金堂)






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