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雪舟の破墨山水図(一)




破墨とは水墨画の技法で、墨を以て墨を破るといい、要するに淡彩の墨を重ねることで濃淡を演出する技法のことである。雪舟には、この技法による絵が何点か伝わっている。これはその一つ「破墨山水図」。画面上部の賛に、自分は破墨の技法を明で学んだことなどが記されている。その款記に「明応乙卯季春中澣日四明天童第一座老境七十六翁雪舟書」とあることから、明応四年(1495)、雪舟馬歯七十六の年の作品であることがわかる。

この絵の技法は、破墨というより、撥墨というべきだとの指摘もある。撥墨とは、画面に薄い墨を一気に注いだ上で、手早く輪郭を調える手法である。雪舟はこれを玉澗から学んだ。倣玉澗と記した図も描いている。

近景には、薄い墨をたらしこんだ上に、するどい線を重ねて、岩山の峻厳なさまを描き、遠景には、消去法を用いて、主山をうっすらと表現している。(紙本墨画 149.0×33.0cm 東京国立博物館)



これは「漁樵問答図」と題した一点。やはり破墨の技法を応用して描いている。中ほど下部に、向かい合って座る猟師と樵が、単純な線で表されている。

なお、「日本雪舟筆」という落款はここだけのものである。(紙本墨画 22.5×29.6cm)







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