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四季山水図(春):雪舟の山水画




ブリジストン博物館所蔵の四季山水図四幅は、落款や押印がないが、雪舟の真筆と断定されている。同じく四季山水図でも、東京博物館所蔵の在明中のものに比べて、一回り小さい。製作時期は、画風に中国の影響が見られるところから、帰朝後間もない時期に描かれたのだと考えられる。

東京博物館所蔵のものと比べると、いくつかの特徴を指摘できる。背景の山と前景の里の様子とが近接して描かれている。山の麓に霧や霞をかけて、ぼやかすという手法をとっていない。全体に描写が明確である。だが山の重なり具合や樹木の葉の描き方に大雑把なところが見られ、構成にも未整理なところがある、などの点である。

そんなところからこれらは、雪舟が帰朝直後の、明での画の修行を踏まえて、自分の画法を確立しようとしていた時期の、実験的な作品だと見ることもできる。雪舟はこのほかにも、明の画家の画風をそれぞれ模倣した実験的な絵をいくつも残しているが、これもその一つだと思える。

これは、四幅のうちの春図。構図的には、前景の人家のある岡から岩山が直立している。また岩山の背後にも人里が覗いており、この岩山が人里のどまんなかに聳えている感じが伝わってくる。

樹木の描き方は明(浙派)の影響を感じさせるが、筆運びがややぞんざいである。また、背後の山の描き方にもぞんざいなところが見られる。(絹本着色 71.2×44.2cm ブリジストン美術館)







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