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雪舟の山水図巻(春夏)



(山水図巻冒頭部分)

帰朝後の雪舟は、図巻形式の山水図をいくつか描いた。文明三年の「倣夏珪山水図巻」をはじめとして、山水図巻(京都国立博物館)、山水小巻、狩野探幽模「山水図巻」などである。それらはいづれも、横長の画面に四季の風景の変化を順を追って描いているというもので、山水画を日本古来の図巻形式で表現しようとしたものだ。雪舟以前の室町時代の山水画は、軸のような縦長の画面で表現するのが普通だったが、雪舟はそれを意図的に横長の画面に移し変える試みを行ったのである。

京都国立博物館蔵の「山水図巻」は、文明三年の「倣夏珪山水図巻」とほぼ同じ頃の作品と考えられる。冒頭の柳岸に春を訪ねる景をはじめ、構図や筆運びに共通する部分が多い。この時期の雪舟は、明で習った中国画の画風や技術を体得することを目的に、夏珪などの中国画家の模索を多く作っており、これもそうした習作のひとつと位置づけることが出来る。

縦21.5、横1151.5の長大な画面に、春から冬にかけての山水の風景を描いてゆく。ただ、後の山水長巻と比べて、季節の移り変わりや季節ごとの特徴が有機的に展開されているとはいいがたく、それぞれ季節を思わせるような景色を、横にアット・ランダムに並べているといった印象である。

山水長巻と比較して画面が多少コンパクトなことから山水小巻と呼ばれることもあるが、山水小巻としては、ほかに文明六年作のものがあるので、ここではこれを「山水図巻」と読んでおきたい。

上は、図巻の冒頭部分。柳岸に春を訪ねる光景である。


これは冒頭に続く部分。岩山の麓の湖にかかる堤の上には桃の花が咲き、春らしい気分が横溢している。堤と岸を結ぶ木橋にも桃の枝が垂れ下がっている。


(山水図巻夏)

山水図巻のなかで一番広い画面が割り当てられているのは夏。全体の半分近くを占める。これは夏の光景の一部。


同じく夏の光景。峨峨たる岩山は、中国人好みをそのまま取り入れたのだろう。







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