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鉄舟と愚渓:室町時代の水墨画 |
![]() 鉄舟徳済は室町時代前期の臨済宗の僧侶。夢窓疎石に師事し、後には入元して、月江正印らのもとで参禅した。帰国後は、京の天龍寺、万寿寺に住し、禅の傍ら水墨画を楽しんだ。水墨画は元で学んで来たもので、禅の余技としてたしなんだようである。可翁とは元で見知りになったと思われる。鉄舟はまた、草書の名人としても有名であった。貞治五年(1366)に亡くなっている。 上の絵は「芦雁図」。鉄舟の代表作である。芦雁図は禅僧が好んで描いた題材で、瀟湘八景中の平沙落雁という題でも描かれた。画面下辺の土坡及び上辺にそれぞれ雁を配しているが、土坡の描き方がかなり平面的なので、画面全体に奥行感がなく、平板な印象は否めない。 しかし、筆墨の振るい方は、初期の水墨画としては的確である。(室町時代前期紙本墨画 110.5×44.0㎝) ![]() 愚渓は字を右慧といい、鉄舟の弟子である。生涯には不明の点が多いが、鎌倉にいたこともあるらしい。十点ほどの作品が現在に伝わっており、道釈、花鳥、山水とけっこう幅広い画題を手掛けている。この絵は「葡萄図」といって、愚渓の代表作。墨蘭を得意とした師鉄舟の影響が窺われる。ざっくりとしたなかにも、葡萄の量感を感じさせ、不思議な魅力がある。(室町時代前期 紙本墨画 65.7×48.4㎝ 個人蔵) ![]() これは、愚渓の「雨中山水図」。余白を有効に生かして、雨に煙る山水の幽玄なさまを表現している。(室町時代前期 紙本墨画 東京国立博物館) |
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