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霊彩:室町時代の水墨画 |
![]() 霊彩は、室町時代中頃に活躍した禅宗系の画僧。東福寺を拠点とした明兆の後継者的な位置づけの人である。詳しいことはわかっていないが、朝鮮側の文献から、寛正四年(1643)に外交使節として朝鮮を訪れ、その際に自作の「白衣観音図」を朝鮮王世宗に献上したとある。朝鮮王は代々儒教を信奉していたが、この世宗だけは仏教への信仰があつかった。そのことを知った霊彩は、白衣の観音図を自ら描いて献上し、世宗の歓心をかったというわけであろう。 現存する霊彩の作品はすべて道釈画である。その画風は、線描を中心にして、画題をざっくりと描くところにある。 上の絵は「騎獅文殊図」。臥した獅子にゆったりとまたがった文殊菩薩を描いているところは、良全の騎獅文殊図と似ているが、こちらのほうがあっさりとしたタッチを感じさせる。その感じは、錯綜した線描と対照的に、観音の表情がゆったりしているところからも醸しだされている。(室町時代中頃 紙本墨画 106.5×34.5㎝ 東京国立博物館 重文) ![]() これは、「寒山図」。寒山は唐時代の道士であるが、禅宗では、同輩拾得ともども文殊、普賢の変身として尊崇された。寒山といえば拾得とならんで、箒をもった姿であらわされるのが普通だが、この絵の中の寒山は、単身で風に立ち向かった姿で表されている。俗に風吹き寒山として知られている。(室町時代中頃 紙本墨画 83.9×35.5㎝ 大東急記念文庫 重文) ![]() これは、霊彩の作品ではないが、寒山拾得を描いたもの。二人並んで立ち、寒山の方は箒を持っている。最もオーソドックスな寒山拾得図である。15世紀の末頃に描かれたと思われる。(紙本墨画 100.2×37.4㎝ 東京国立博物館 重文) |
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