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近世初期の風俗画 |
日本の絵画の歴史の中で風俗画が本格的に作られるのは室町時代末のことだ。京都の町並の様子や人々の風俗を詳細に描き入れた洛中洛外図が数多く作られた。その代表的なものは狩野永徳の洛中洛外図で、これはあの信長が上杉謙信との誼を求めてプレゼントしたことで有名だ。当時の権力者である信長が、プレゼントとして選んだのが、同時代の日本人の風俗を描いた作品だったというのが面白い。俺は日本じゅうの人間たちの暮らしを、この手中に握っているのだと言いたかったかのようだ。 洛中洛外図には、庶民の雑多な暮らしぶりが描かれていたが、そのなかから特定のテーマを選んでとりあげたものも描かれた。まずは、年中行事を取り上げたもので、これには個々の年中行事をとりあげたもののほかに、月次風俗図といって、月ごとにかわる風俗行事を羅列的に取り上げたものもあった。 風俗行事のなかでもっとも規模の大きなものは祭礼だ。この祭礼を描いたものが多く作られたが、なかでも、豊臣秀吉の命日に行われた豊国祭礼を描いたものがもっとも有名である。日本人は祭り好きであるが、その祭り好きの熱狂が、豊国祭礼図からは伝わって来る。 祭りとならんで遊戯を描いたものも作られた。近世初期には犬追物という、狩猟のような遊戯が武士の間で流行したが、この犬追物を描いた風俗画が多く作られた。 近世初期には、歌舞伎など新しい形の芸能が生まれた。その芸能の様子を描いた風俗画も多く作られた。代表的なのは、阿国歌舞伎の様子を描いたものや、四条河原での遊女たちの踊りを描いたものなどである。 遊女たちは画家の想像力を刺激しただけでなく、庶民の関心をもかきたてたので、その遊女に焦点を当てた風俗画が多く作られた。彦根屏風とか松浦屏風として知られる絵などはその代表的なものである。また、近世初期には湯女というものが現れ、ある種の売笑文化の担い手となった。この湯女を描いた作品も伝わっている。 それら遊女たちを描いた図柄を見ると、当時の服装を始めとした風俗の様子がうかがえ、歴史研究の上でも貴重な材料を提供している。 近世初期には南蛮貿易も盛んになった。その貿易の様子を描いた風俗画も作られた。代表的なのは南蛮屏風として知られる南蛮人交易図だ。長崎の出島における南蛮船の接岸とそれを迎える南蛮人たちの様子が詳しく描かれている。 このサイトでは、こうした近世初期の風俗画を取り上げて、画像を鑑賞しつつ適宜解説を加えたいと思う。 洛中洛外図(歴博甲本) 月次風俗図屏風(一) 月次風俗図屏風(二) 豊国祭礼図屏風一 豊国祭礼図屏風二 洛中洛外図屏風舟木本 三十三間堂図屏風 犬追物図屏風 花見鷹狩図屏風 阿国歌舞伎図 四条河原図屏風 彦根屏風:近世初期の風俗画 松浦屏風:近世初期の風俗画 舞踊図 湯女図 伝本多平八郎姿絵 南蛮屏風 |
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