日 本 の 美 術
HOMEブログ本館日本文化美術批評東京を描く水彩画動物写真 | プロフィール掲示板



蓮下絵百人一首和歌巻(断簡):宗達と光悦




蓮下絵百人一首和歌巻は、宗達と光悦とのコラボレーション作品のうちで、掉尾をかざるものである。そのことは、巻末に置かれた「大虚庵光悦」という落款から推測できる。光悦がこの落款を用い始めるのは、鷹が峰の光悦町への移住後のことだからだ。その事実をもとに、この図の制作年代は、元和年間(1515-23)の初頭ころと推測される。

この図は、もともとは長い巻物の一部(断簡)だった。その巻物の料紙に宗達が金銀泥で蓮ばかりを描き、その上に光悦が、小倉百人一首の和歌を書き加えた。ところがこの巻物は、関東大震災で被災し、大部分(56首分)が消失した。焼き残った部分はその後断裁され、諸家に分蔵されている。

上の写真の図は、巻物の終わりに近い部分だ。百首の歌の95首目にあたる。その歌は、前大僧正慈円の作で、「おほけなく浮世の民におほふかな我立杣に墨染の袖」というものである。

銀泥で蓮の花弁を描き、金泥で茎を描いている。銀泥が大部分を占め、その色合いが黒々としていることから、墨絵を思わせる。銀の色合いを濃淡で表現しているところも墨絵のような効果を感じさせる。

(巻物断簡 紙本金銀泥 33.1×68.9cm 東京国立博物館)





HOME| 俵屋宗達| 次へ








作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2013-2018
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである