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扇面散貼付屏風:宗達の扇面図 |
宗達の実家俵屋は、絵屋として、市中にかなり知られていたようである。俵屋は、基本的には大衆的な絵屋として、貴族や寺社の求めに応じて書くというより、庶民の需要に応えていたものと推測される。その需要の主なものは、襖に張り付けることを目的とした図であるとか、扇の装飾だったと思われる。これは、宗達の家業というべきものだから、おそらく生涯のあらゆる時期にわたって制作したのだと思われる。しかし、単体として残っているものは数少ない。特に扇の場合には、扇の形としてではなく、扇面のために書かれた図柄を、襖に張り付けた形のものが残されている。 扇面を襖に貼り付けたものとしては、八曲一双の襖に48枚の扇面を貼り付けたものや、二曲一双の襖に11枚の扇面を貼り付けたものが知られている。後者は今日、扇面散貼付屏風と呼ばれている。これは宗達自身の意匠ではなく、後世の工夫である。存在していた宗達の扇面を、後世の人が襖に貼り付けたものである。 十一枚の扇面は、保元物語などに取材した物語絵のほか、風景や動物を描いたものなどで構成される。それぞれの絵に描かれている扇の骨の部分は、後世の絵師が、墨で付け加えたものである。 これは、田家早春図。早春の風景を描いたもので、ポイントは三つの屋根にある。その屋根の合間に、花をほころばせた梅の木を描き、また、狭い空間にかかわらず、余白を作って余韻を醸し出している。いつ頃の作品か特定はできないが、円熟した技法からして、後期のものだろうと推測される。 (二曲一双 各157×168㎝ 紙本着色 醍醐寺 重文) |
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