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源氏物語澪標図:宗達の襖絵




宗達の襖絵「源氏物語澪標図」は、同「関屋図」とともに一組をなすものだ。宗達はこれらが一対の組を形成していることを、さまざまな面で強調している。山に対する海、静に対する動、水平線の強調に対する垂直線の強調などである。こうしたコントラストの強調を通じて、この一対の絵が、有機的につながりあっていることを主張しているかのようである。

澪標の巻は、光源氏が住吉神社に参詣する場面を描いている。その際に、源氏のかつての愛人明石の上が、船に乗って沖合に現れる。源氏はそれを見て、鉢合わせになることを恐れ、引き返す。この絵では、牛車に乗っている源氏の前に、明石の上を乗せた船を描いている。巻のなかの最も劇的な部分をイメージ化しているわけである。

源氏物語の絵巻は古来数が多いが、澪標の巻を描いたものは、ほとんど源氏の一行だけを描くにとどまっていた。ところがこの絵は、明石の上を乗せた船を大きく描くことで、源氏と明石との遭遇という劇的な事件を、視覚的に強調してみせた。そこに宗達のこだわりのようなものを指摘することができよう。

なお、宗達は、画面構成にさいして、先人たちの業績をよく利用している。「保元物語絵」や「北野天神絵巻」から人物の姿を借用したりなどである。樹木などは、自分自身の「西行物語絵」のものをそのまま横引きして使っている。



これは、源氏を乗せた牛車の部分を拡大したもの。牛車の周りの人物がみな、なんらかの動きをしている。その動きが、絵に独特のリズムを生み出させている。

(紙本金地着色 152.2×355.6㎝ 静嘉堂文庫 国宝)





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