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牛図:宗達の水墨画




京都の日蓮宗寺院頂妙寺は、宗達の墓があることで知られているが(真偽は確かではない)、そこには宗達の牛を描いた双福の掛軸が保存されている。普段は非公開で、特別公開の際も双福がそろって公開されることはない。なお、この頂妙寺は、有名な安土宗論に日蓮宗を代表して僧を派遣したほど、日蓮宗にとって重要な意義を持った寺である。

この双福図は、蓮池水禽図とならんで宗達の水墨画の「最高傑作」と言われる。宗達得意のたらしこみの技法を使って、牛の筋肉の躍動感を見事に表現している。牛を描いた絵は、前回触れた宗達自身の作品源氏物語図をはじめ、おとなしい姿で描かれるのが普通で、この双福のように、ダイナミックな動きが描かれているのは珍しい。

これらの牛は、北野天神絵巻から輪郭を借りたことがわかっているが、まるで全く違ったイメージに描き替えている。晩年の作だと思われる。



これは、右側の牛の部分を拡大したもの。たらしこみが有効に働いているのが見てとれる。なお、この絵の上部にある賛は、烏丸光広のもので、「身のほどをおもへ世中うしとてもつなかぬうしのやすきすがたに」と読める。牛に憂しをかけているわけである。

(紙本墨画 各96.5×44.3㎝ 京都頂妙寺 重文)






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