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伊勢物語図色紙:宗達の世界




宗達の手になる伊勢物語の色紙が今日46枚伝わっている。それらは、一時期に描かれたものではなく、寛永の半ばころから慶安年間にわたる十数年間に描かれたらしい。いずれにも宗達による落款はないのだが、色紙と裏打ち紙との間にある覚書から、ある程度の情報が得られる。それによると、書の筆者は、高松宮良仁親王や万里小路雅房など、身分の高い人であり、晩年の宗達が、貴族社会と深いかかわりを持っていたことがわかる。

伊勢物語は古くから絵画化されていた。源氏物語のなかにも、伊勢物語をテーマにした色紙らしいものが登場する。宗達の生きた時代にも、伊勢物語や源氏物語などをテーマにした色紙が上流階級の間で流行したようで、この伊勢物語にかかわる一連の色紙群は、そうした需要に応えたものと思われる。

同時代の土佐派の色紙に比較すると、宗達の色紙はスケールが大きく、持ち前の金銀泥絵の技法を駆使して、小さいながらも豪華絢爛たる世界を現出せしめている。

上は、伊勢物語第六段「芥川」の部分をイメージ化しているもの。業平と思しき男が、高貴な女を連れ出して逃げるが、芥川のあたりで休んでいるところ、女が鬼によって食われてしまうという筋だ。この絵は、男が女を背負って芥川にさしかかるところを描いている。詞書には、「女のえうましかりけるを、としをへてよはひわたりけるを、からうしてぬすみ出で、いとくらきに来けり」とある。(紙本着色 24.6×20.8㎝ 大和文化館)



これは、第六十五段「禊」の部分。業平と思しき男が、女への未練を断ち切るために、御手洗川で禊をするが、女への思いはいっそうつのったという話だ。詞書には、「恋せしとみたらし河にせしみそき神はうけすもなりにけるかな」とある。(紙本着色 24.5×21.0㎝ TOREKコレクション)





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