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すたすた坊主:白隠の漫画




すたすた坊主というのは、主に街道筋に出没し、芸をしながら物乞いをする乞食坊主のことで、徳川時代の中頃に沢山存在したようである。白隠は、そのすたすた坊主に布袋を重ね合わせた。布袋がすたすた坊主となって、人々に功徳を施すところを描いたわけである。

このような白隠の意図は、賛の文章からうかがわれる。右側の賛には「布袋どらをぶちすたすた坊主になる所」とある。布袋が銅鑼を打ち鳴らしながら、すたすた坊主となって歩き回ると言う意味だ。左側の賛には、「来た来た又来た来た、いつも参らぬ、さひさひ参らぬ、すたすた坊主、夕べも三百はりこんだ、それからはだかの代参り、旦那の御祈祷、それ御きとう、ねぎの御きとう、猶御きとう、一銭文御きとう、なあ御きとう、かみさま御きとう、よひ御きとう」とある。すたすた坊主がばくちですって一文無しになり、裸で代参りをしてしのぐ。代参りというのは、忙しい旦那にかわって神社におまいりする事で、坊主が寺ではなく神社におまいりするのが面白いところだ。

徳川時代の書物によると、すたすた坊主の姿は次のようなものだったらしい。真っ裸のうえに注連縄のようなものを腰に巻き、手拭いで鉢巻をし、扇と錫杖を持って踊りながら、独特の発声で囃しつつ、人に金品を乞うというものだ。白隠のこの絵の中のすたすた坊主は、扇と錫杖のかわりに、稲藁のようなものと小桶を持っている。



これはすたすた坊主の部分を拡大したところ。真っ裸のうえに注連縄だけをつけた姿で描かれている。表情は温和そのもので、布袋が弥勒菩薩の化身だということを思い出させてくれる。

(紙本墨画 52.7×93.9cm 早稲田大学会津八一記念館蔵)







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