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闇夜漁舟図:蕪村の世界




「闇夜漁舟図」は、水墨で闇夜を表現しながら、わずかな光を強調することで、独特の効果を演出している。光は、舟の上のかがり火から立ち昇る煙と、遠くに見える家の中からもれる灯りで表現される。煙はそれ自身が光を発するように見え、その光に浮かび上がった木の部分だけが、色彩を持っている。

こんなわけでこの絵は、光の表現に持ち味がある。かがり火から発した光が、水に反射して舟の姿を浮かび上がらせ、その舟に乗っている親子の姿を垣間見せる。子どもが舟を漕ぎ、父親が網をかけているが、こうした生活を感じさせる人物の描き方は、蕪村の大きな特徴の一つである。

全体が墨の濃淡で表現され、闇の深さを感じさせる工夫がなされている。右上に「謝春星写老夜半亭中」とある。(130.2×47.2cm 絹本墨画淡彩)



これは、舟の部分を拡大したもの。光に照らされた部分だけに色彩が施されているのがわかる。特に、かがり火の煙があたって木の部分は、暖かさを感じさせる色合いになっている。親子は闇から浮かび上がるように描かれているが、決して背景から逸脱していない。ほんわりとした描き方である。







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