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新樹郊行図:蕪村の世界




蕪村の画業の大きな特徴として、道を繰り返し描いたことがある。その道を行く人は、深山幽谷に隠士を訪ねる人であったり、あるいは郊外や山里にピクニック気分で出かける人であったりする。「新樹郊行図」と題したこの絵は、後者のようである。

新樹の季節であるから初夏であろう。山の麓には霞がかかっている。霞の下には長閑な山村の光景が広がり、その道を馬に乗った男が二人通り過ぎる。男のうちの一人は、右手を上げて空を見上げている。季節柄杜鵑が鳴いているのかもしれない。

霞の上には山が聳えて見えるが、これは南宋画のタッチだ。一方山里の長閑な風景は日本の匂いがする。蕪村は一つの画面に、中国風と和風を同居させるのが好きだったようだ。

謝寅の署名がある。(62.7×110.7cm 紙本淡彩)







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