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伊藤若冲:作品の鑑賞と解説


伊藤若冲(1716ー1800)は徳川時代の中ごろに活躍した絵師で、当時はそれなりに知られていたらしいが、近代になるとほとんど忘れられた存在となった。それを再発見して紹介したのがアメリカ人プライスだったというのが、日本人としては癪なところだ。だが、そんないきさつを別にすれば、伊藤若冲が正当に評価されるようになったことは、日本美術にとってよいことだったと言えよう。その若冲の代表作といえる「動植綵絵」は皇室によって保存されていた。若冲が一連の作品を奉納した京都の相国寺が、それを皇室に奉納したからである。ということは、若冲の絵はやはりすばらしいものと認知されていたわけである。

伊藤若冲は、京都青物問屋の老舗に生まれ、裕福な生活の中で育った。誰について絵の修行をしたか、詳しいことはわかっていないが、狩野派の絵師から手ほどきを受けたようだ。伊藤若冲の絵には、狩野派の技法をベースにしながら、若冲独特の癖のようなものが指摘できるのである。

当初は中国古典絵画の模写に没頭したいたが、そのうち実物写生にせいを出すようになった。京都相国寺の禅僧大典和尚によると、窓の下に鶏を数十羽飼って、その形状を観察・写生して倦まなかったという。伊藤若冲は、狩野派に学びながら、狩野派得意の山水とか人物には興味を覚えず、専ら鶏を描いたことから、鶏絵師と呼ばれることもあった。もっとも晩年には、動物以外のモチーフも描くようにはなったが。

宝暦五年満39歳の年に、家督を弟に譲って自身は隠居の身になり、画業に専念するようになった。生活の基盤がしっかりしていたので、絵に専念することができたのである。伊藤若冲は、その絵を生活のために売る必要がなかった。描いた作品は、相国寺をはじめ各地の寺院に寄贈したのである。

代表作の「動植綵絵」三十幅は、宝暦八年(1758)から明和七年(1770)まで、十二年間かけて描き上げ、相国寺に寄贈した。伊藤若冲は、相国寺とは深い縁があったようで、大典和尚とは早くから付き合いがあった。

動植綵絵の制作を終えたあとは、しばらく画業から遠ざかった。安永五年(1776)に還暦を迎えると、京都の深草にある黄檗宗寺院石峰寺のために、釈迦生涯の説話場面を絵に再現し、かつ五百羅漢の石像群を配置するという大事業に取り掛かった。その事業には膨大な費用がかかったので、伊藤若冲はその費用の足しにと思い、略筆の墨絵を描き、それを一斗の米の値段と交換した。ついては、若冲は米斗翁と名乗った。米一斗で絵を描く翁という意味であろう。

晩年は、各地の寺院のために襖絵を描いたり、また図屏風を寄進したりして、悠々たる余生を楽しんだ。それらには、山水画や人物画も見受けられる。だが、伊藤若冲の真骨頂はやはり鶏を中心とした動物画であり、かれのマスターピースは「動植綵絵」である。ここでは、「動植綵絵」を中心にして、それにプライス・コレクションの作品を加えて取り上げ、鑑賞しながら適宜解説・批評を加えたい。


動植綵絵

 芍薬群蝶図:若冲動植綵絵

 梅花小禽図:若冲動植綵絵

 雪中鴛鴦図:若冲動植綵絵

 秋塘群雀図:若冲動植綵絵

 向日葵雄鶏図:若冲動植綵絵

 紫陽花双鶏図:若冲動植綵絵

 大鶏雌雄図:若冲動植綵絵

 梅花皓月図:若冲動植綵絵

 老松孔雀図:若冲動植綵絵

 芙蓉双鶏図:若冲動植綵絵

 老松白鶏図:若冲動植綵絵

 老松鸚鵡図:若冲動植綵絵

 芦雁図:若冲動植綵絵

 南天雄鶏図:若冲動植綵絵

 梅花群鶴図:若冲動植綵絵

 棕櫚雄鶏図:若冲動植綵絵

 蓮池遊魚図:若冲動植綵絵

 桃花小禽図:若冲動植綵絵

 雪中錦鶏図:若冲動植綵絵

 群鶏図:若冲動植綵絵

 薔薇小禽図:若冲動植綵絵

 牡丹小禽図:若冲動植綵絵

 池辺群虫図:若冲動植綵絵

 貝甲図:若冲動植綵絵

 老松白鳳図:若冲動植綵絵

 群魚図(蛸):若冲動植綵絵

 群魚図(鯛):若冲動植綵絵

 芦鵞図:若冲動植綵絵

 菊花流水図:若冲動植綵絵

 紅葉小禽図:若冲動植綵絵


プライス・コレクション

 虎図:若冲プライス・コレクション

 葡萄図:若冲プライス・コレクション

 旭日雄鶏図:若冲プライス・コレクション

 紫陽花双鶏図:若冲プライス・コレクション

 雪芦鴛鴦図:若冲プライス・コレクション

 竹梅双鶴図:若冲プライス・コレクション

 群鶴図:若冲プライス・コレクション

 鳥獣花木図屏風右隻:若冲プライス・コレクション

 鳥獣花木図屏風左隻:若冲プライス・コレクション

 芭蕉雄鶏図:若冲プライス・コレクション

 鯉魚図:若冲プライス・コレクション

 松鷹図:若冲プライス・コレクション

 伏見人形図:若冲プライス・コレクション

 鷲図:若冲プライス・コレクション




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