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芍薬群蝶図:若冲動植綵絵




「芍薬群蝶図」は、「若冲動植綵絵」三十幅のうち、技法上の特徴などをもとに、もっとも早い時期の作品と推定されている。制作年代を確定できる最古の作品が、宝暦八年(1758)の「梅花小禽図」であるから、この作品はそれ以前、恐らく宝暦七年以前ではないかと推定される。

鮮やかな色彩で描かれた芍薬の花のまわりに、大勢の蝶が舞い飛んでいるさまを描く。一つ一つの蝶をよく見ると、みな羽を大きく広げて、上から見たような角度で描かれている。これは採集した蝶をピンでとめて保存する昆虫採集の手法を思い起こさせる。若冲は、蝶の採集マニアから標本を見せられて、それを画面に移し替えたのだろうと推測される。同じような形態をびっしりと描き加える手法は、若冲の作画のひとつの特徴である。

また、この作品には、上部に大きな余白を設けていること、芍薬の白い花びらが、胡粉をうす塗りしていることなど、若冲の初期の技法の特徴が見られると言われる。なお、大典和尚の「藤景和画記」はこれを「艶霞香風」と題している。



花びらと蝶の姿を拡大したところ。蝶の中には、横からの角度のものもある。(142.0×79.8cm)







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