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芦雁図:若冲動植綵絵




「芦雁図」は、雪の降り積もった芦の生える沼地のようなところへ向かって、一羽の雁が急降下してゆくところを描いたものである。雁の姿は画面からはみ出すように大きく描かれており、実物よりもはるかに大きい。それ故、この絵を見た人は、雁の姿に異様な迫力を感じる。

迫力を感じるだけではない。首を下に向けて急降下するところが、独特の緊張感をかもし出している。この緊張感を若冲の不安の表れだとする解釈もあり、また、その不安は後継者としてあてにしていた末弟の宗寂が死んだことに結び付けて解釈する見方もある。宗寂は、若冲が動植綵絵二十四幅を相国寺に寄進する直前(明和二年<1765>)に亡くなった。この絵は、それ以降に描かれたものである。

雁の首の部分に絵の具のにじみを利用したグラデーションをほどこしたり、胡粉で描いた雪の白い地の上にさらに薄く上塗りをして陰影を強調したりと、若冲なりの技法の工夫が窺われる一枚だ。(142.6×79.3cm)



これは、雁の部分を拡大したところ。羽の模様が非常に丁寧に描き分けられている。







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