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虎図:若冲プライス・コレクション




「虎図」は、署名と並んで「宝暦五年乙亥首夏」との記載があることから、家業を弟に譲って画業に専念し始めた年の作である。また「我画物象非真不図、国無猛虎倣毛益摸」とあることから、南宋の画家毛益の作を模倣したと若冲本人は主張しているのがわかるが、実際に若冲が模倣した原画は、正伝寺所蔵の李公麟筆「猛虎図」であるとされる。

模倣であるから、構図に若冲の独創は認められないが、虎の描き方には、原作にはない特徴を認めることができる。原作は、黄土色の絵の具で虎の毛を一本ずつ丁寧に描いているが、若冲は黄土色で下塗りをした上から、墨で細かい線を描き加えている。この技法は、若冲の独創と言ってもよく、動植綵絵のなかの鳳凰の描き方にも用いられている。

虎の輪郭線の外側を、薄い墨で塗り、虎を浮き出て見えるように工夫しているが、これは却ってマイナスになったようである。虎は、立体的に見えず、平板に見えてしまっている。(129.7×71.9cm 絹本)



これは虎の部分を拡大したもの。墨で表現した毛の繊細な様子が伝わってくる。こうした繊細さは、後になって一層洗練の度合いを増してくわけだ。







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