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教訓親の目鑑(二):歌麿の美人画



(ぐうたら兵衛 大判錦絵)

寝起きの女を描いたものだろう。手ぬぐいを肩に、茶碗の水でうがいをしている。髪がほつれているのは、寝相の悪いためだろう。いかにも「ぐうたら」の名にふさわしい。

「おもしろきこともさしてよろこばざれば、うきこともつらからず、こしかたゆくすえのあんじもなきにや」と注記にあるのは、この女が何事も気に病まず、ただただぐうたら三昧に生きている気楽さを皮肉っているのだろう。

上半身を斜めにせり出した、女の姿勢がなんともユーモラスな感じを与える。


(ばくれん)

「ばくれん」とはすれっからしとかおてんばという意味。この絵の中の女の気象の荒さをさすのにふさわしい言葉だろう。

女は左手で茹でた蟹を持ち、右手でワイングラスのようなものを傾けて酒を飲んでいる。女の着ている鳶色の着物をよく見ると、男山とか剣菱という文字が見えるが、これは酒の名である(これらの銘柄は今も健在だ)。

女の表情はきりりと引き締まり、二の腕も固肉に描かれている。注記には「ただいろけなきとのみ見すれども実情にあらず」とあるが、この女なりに色気があるではないかと、言っているのだろう。晩年の歌麿の女のなかでは、もっとも個性に富んだ女性像だと言える。







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