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東京新大橋雨中図、隅田川小春凪:小林清親の東京名所図



(東京新大橋雨中図 明治九年)

清親が明治九年に松木から刊行した東京名所図シリーズ五点のうちの一点。清方の作品のなかではもっとも有名なもののひとつである。

小雨のなかに浮かび上がった新大橋の形を捉えている。新大橋は、徳川時代に両国橋の次に架けられたことから、大橋と呼ばれた両国橋に対して新大橋と呼ばれた。明治初年にはこのように、徳川時代のままの木橋であったが、その後トラス型の鉄橋となり、今では変った吊橋型の鉄の橋である。

黒い雨雲の下に見えるのは、隅田川の河口方面だろうか。もしそうなら、右手の河岸は日本橋側ということになる、その背後に見える倉庫のような建物群は浜町河岸あたりだと思われる。

土手を歩く女が、蛇の目傘をかざし、着物を端折って赤い襦袢を見せているのは、いかにも雨もよいの天気を感じさせる。


(隅田川小春凪 明治十三年)

夕日をバックに隅田川の凪いだ様子を描いたのだろう。夕日の方角からして、手前が上流と思われる。橋は新大橋か、あるいは両国橋だろう。新大橋なら、左手前の河岸は浜町あたり、両国橋なら西両国ということになるが、それにしては、繁華さに欠けるかもしれぬ。

今日の隅田川の両岸は、とりわけ中流域では、東京でもビルが林立する繁華な土地だが、明治の初年にはこのように自然豊かな閑静な場所であったことが、この絵柄からわかる。







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