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両国雪中、両国花火之図:小林清親の東京名所図



(両国雪中)

今でこそ両国といえば両国橋の東側である墨田区の地名になっているが、徳川時代から明治初期にかけてまでは、両国橋をはさんだ東西の両方をさして両国と言った。西両国は繁華な市街地を形成し、東両国は回向院の相撲をはじめ、見世物や興行を行う小屋が立ち並んでいた。

この絵は、両国のどちら側を描いたのか、これだけではわからない。結構大きな広場が見えるから、見世物小屋の立ち並んだ東側だったのかもしれない。右手に見える建物は、今の感覚ではとても劇場にはみえないが、明治初年の見世物小屋はせいぜいこれくらいの規模の大きさだった。

題名に雪中とあり、道行く人々が傘をさしているので、雪が降っているのだろう。だが、画面からは雪の降る様子はうかがえない。柱の間を結んで線が架かっているのが見えるが、これは電柱だろう。両国は東京でも有数の繁華街だったから、電柱の敷設も早かったようである。


(両国花火之図)

両国の花火は、徳川時代から江戸の庶民にとって最大級の娯楽イベントだった。隅田川に浮かべた船から花火を上げたようだ。その手法は平成のいまでも引き継がれていて、花火の大部分は船上から打ち上げられる。スターマインと言って小型の球だから、船の上からでも安全に上げられるのだ。

これは、隅田川に浮かべた船から花火を見上げる人々を描いたもの。暗黒の夜空に、花火のはじけたところだけが明るく浮かび上がっている。







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