日 本 の 美 術
HOMEブログ本館日本文化美術批評東京を描く水彩画動物写真 | プロフィール掲示板



上野東照宮積雪之図、上野東照宮の夜:小林清親の東京名所図



(上野東照宮積雪之図 明治十二年)

上野の東照宮は、家康の死後、天海僧正らによって造営され、慶安年間に家光によって現在の形に整備された。日光や久能山と並んで、全国各地にある東照宮の総社のような位置づけになっている。また牡丹の名所としても知られる。

東照宮の建物は、戊辰戦争や関東大震災でも被災を免れ、東京大空襲にも焼け残ったため、江戸初期の建築様式を伝える貴重な遺構となっている。唐門の奥に、拝殿、幣殿、本殿が順に並び、その周囲を透塀で取り囲む権現造りを採用している。

これは本殿前の参道に立つ鳥居。清親はこれを雪景色として描いた。鳥居、灯篭、路上には雪が積もって白く輝き、そこを参詣の人々が往来している。上野の東照宮は、徳川の象徴のようなものだったから、明治初期にはまだ、多くの庶民に親しまれていたと思う。


(上野東照宮の夜 明治十四年)

これは、上の図柄とはポジとネガの関係にあるように見えるが、よく見ると構図が微妙に違う。参道を行き交う人の姿が見られぬし、参道の奥にあるべき本殿などの建物も省かれている。

夜景にかかわらず、参道が白く浮き上がって見えるのは、清親のトリックだろう。







HOME小林清親の東京名所図次へ










作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2013-2016
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである