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千ほんくい両国橋、東京両国百本杭暁之図:小林清親の東京名所図



(千ほんくい両国橋)

両国橋の北東、現在の安田庭園付近の隅田川の水面には夥しい数の杭が打ち込まれていた。防潮の役目を果たしていた。このあたりは古地図でみると、隅田川が湾曲してちょっとした湾のような形状を呈していて、そこに波が立ちやすかったと推測される。その波を消す為の簡易防波堤のようなものとして杭が打ち込まれ、その数の多さから千本杭とか百本杭とか呼ばれた。

この杭は徳川時代に打たれたものだが、芥川龍之介の文章のなかにも登場するから、大正の頃まであったのだろう。関東大震災の折には、周辺一体が焼け野原になってしまったから、その時にはこの千本杭も消滅しただろうと思われる。

これは千本杭越しに両国橋を眺めたもの。左手に川岸の建物が見え、そこから手前に川の水が入り込んでいるところから、隅田川がこのあたりで湾曲している様子が伝わってくる。


(東京両国百本杭暁之図 明治十二年)

これは本所の杭を百本杭と言い替えたものだ。隅田川に両国橋の架かっている様子が見えないから、杭越しにほぼ真直ぐ先の対岸の方向を眺めている図柄だろう。

暁の様子を描いたようだから、日は画面の左手(東側)に上がっているはずだが、どういうわけか清親は、西の空から日が昇っているように描いている。もしかしたら、夕日を描いたものに、暁の題名をつけたのかもしれぬ。







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