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唐招提寺、秋篠寺:奈良古寺めぐり(三)



(秋篠寺庭園)

薬師寺より唐招提寺に至る道筋に一軒の蕎麦屋を見かけたれば、そこにて昼餉をなす。昨日のうどんと同じく関西風の出汁なり。この出汁、うどんにはあふといえど、蕎麦にはあはざるが如し。しかもこの店のそばは、春雨のごとく細し。蕎麦はやはり関東風が勝れるやうなり。

唐招提寺金堂は、四半世紀前に見たる時とはやや趣の異なれるやうに感ず。その折には、堂内直接外気にさらされ、観客は一つ一つの仏像を身近に見ることを得しが、この日は金網を以て隔てられてあり。されども、外気との境はこの金網ひとつにて、ほかには何物もなし。当寺の仏像の破損甚だしきは、そのためと思はるるなり。

唐招提寺金堂は、平成の大修理といふものを施され、建物は平成二十年、仏像は同廿一年に旧状に復したりといふ。この修理の際に、千手観音などは、すべての手の解体修理をなせしといふ。この修理によっても、諸仏の表面の汚れの類は完全に払拭せらるることなし。修理も度が過ぎては、仏像の価値を既存するおそれありとの理由による由。

唐招提寺前よりバスに乗り西の京駅に至り、そこより近鉄電車に乗り西大寺に至る。当初は、西大寺より奈良に直行する心つもりなりしが、聊か時間のゆとりあり、右膝の状態も今しばらく耐えられさうに覚えたれば、西大寺駅前よりバスに乗り秋篠寺に至る。この寺、住宅の立ち並ぶ閑静な場所の一角にひっそりとたたずみてあり。されど境内は広く、庭には苔を養ひてあり。なかなか閑寂なる風情といふべし。

本堂内には、薬師三尊像、十二神将群像、五大明王像などと並んで、伎芸天像、帝釈天像立ち並びてあり。この寺最重要の宝物は伎芸天像なり。この像なぜか帝釈天像と左右対称の位置に立てり。いかなる因縁によるや、興味をそそらるるなり。

バスにて西大寺駅に戻れば、奈良行きのバス恰も発車せんとす。是非なくこれに乗り、ホテル前にて下車す。三時半頃のことなり。この頃には右膝の疲労甚だしく、また痛みもぶり返したり。部屋に入るやそのままベッドの上に横になり、しばし休息をとりぬ。

その後、地下の大浴場に下りて湯につかり、六時過バスに乗り近鉄奈良駅に至り、さくら通りなる路地の奥の豆腐料理屋豆仙坊にて夕餉をなす。豆腐主体の懐石風料理を注文し、春鹿なる銘柄の酒を飲む。昨夜月日亭にて飲みしところなかなかうまかりければまた飲む気になりしなり。







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