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ならまち:奈良古寺めぐり(七)



(ならまちの家並)

興福寺を辞して後、猿沢の池のほとりを過ぎ、ならまちを散策す。ここは古民家が点在するところとして知らるるなり。文字通り点在するのみにして、今井町の如く面として古民家が集積するにはあらず。それでもなかなか見どころあり。

ならまちにさしかかる程のところに元興寺あり。飛鳥寺を移築せるものとして知らるるなり。本尊の仏像よりも、天平時代の寺院建築高く評価せられ、世界遺産にも加へらるる由なり。

ならまち資料館なる古民家風の建物の向なる吟松なる蕎麦屋にて昼餉をなす。この資料館の玄関入り口には、福助の人形飾られてあり。足袋の商標として名高きあの福助なり。さては、ここがその発祥の地なりやと感慨深し。福助の足袋は、小生もよく履いたものなり。今は確かその会社は廃業して、履くことを得ずなりしはずなり。


(ならまち資料館の福助人形)

資料館建物横手の壁に掲示板あり。そこに、「ならまちしぐれ」と題する歌の文句を書きつけたるものあり。「あほのすすめ」を説いたるものなり。おかしければ、その一節を記し置く。いはく
  年をとったら出しゃばらず
  憎まれ口に 泣きごとに
  人のかげ口 愚痴いわず
  他人のことは褒めなはれ
  聞かれりゃ教えてあげてでも
  知ってることでも知らんぷり  
  いつでもアホでいるこっちゃ
かかる調子で続くなり。とんだ処世訓といふべし。

また、ならまちからくりおもちゃ館といふものあり。前を通りかかる頃に丁度尿意を催したれば、中に立ち入りて小用を足す。館内には他に何人かの来客あり。彼らを相手に、この家の主人と思しき老人、からくり人形を実演してあり。老人我が存在に気づくや、近くに寄り来り、あなたも是非お試しなはれといふ。小生は、見物するだけで結構ですと答ふ。老人又いふ、今晩のお水取りは見に行かれまっか。小生答へていふ、残念ながらもう帰らなくてはなりませぬ。老人重ねていふ、では今度はお水取りを見に、是非奈良においでなはれ、と。

その後、ならまち周辺を、土産物屋を覗きつつ徘徊し、歩き草臥れる頃近鉄駅に戻る。車内夕餉のためにと柿の葉寿司を買ひ求め、午後三時の京都行き特急に乗る。しかして、京都駅午後4時56分発特急ひかり476号に乗り東京へむかひたり。







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