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法隆寺金堂壁画



(法隆寺金堂壁画のうち阿弥陀浄土図)

法隆寺には五重の塔と金堂にそれぞれ壁画が施されていた。いた、というのは金堂の壁画の大部分が、昭和49年の解体修理中の不審火によって焼失してしまったからである。現在あるものは、その後になって模写物を埋め込んだものである。焼失したのは、金堂外陣にあった12面の壁画と、その上部の小壁に描かれていた18面の山中羅漢図である。内陣の20面からなる飛天の壁画は、火災の際には取り外されて別の所に保管されていたために無事であった。

金堂外陣の壁面には、柱と柱の間に、大壁が4面、小壁が8面あり、そのうち大壁には四仏浄土図が、小壁には8菩薩図が描かれていた。壁面の高さは約310センチメートル、横幅は大壁で約260センチ、小壁で約155センチメートルである。

四仏のうち正体が明らかなのは、西側の壁面に描かれた阿弥陀浄土図(上の写真)である。蓮華座に坐し、両手を胸の前で天法輪印に結び、左右の脇侍はそれぞれ宝冠に化仏と宝瓶があることから観音菩薩と勢至菩薩であることが明らかである。このような特徴を併せ持つのは阿弥陀如来のみであるから、この像については、人による異存は生じていない。

残りの三つは、それぞれ釈迦、薬師、弥勒であると考えられるが、どの壁画がどの仏を描いているのかについては、学者の間でも意見が異なっている。その中で有力なのは、阿弥陀浄土図の対面にあるものを釈迦とする意見である。これは両側に脇侍を従えているほかに十人の羅漢を従えているが、これは十大弟子をあらわすと考えられ、十大弟子だとすれば、本尊は釈迦に違いないと考えられるからである。


(法隆寺金堂壁画のうち飛天図)

飛天の壁画は20面あるが、図柄はどれも同じで、二人の飛翔する天人を描いたものである。すべて同じ下絵に基づいて描かれたと思われる。サイズは縦約71センチ、横約136センチメートルである。

絵画の様式には、唐の影響が伺われると指摘されている。これを以て、天平絵画の始まりだとする意見もある。天平絵画というのは、仏像もそうであるが、ふくよかで円満な身体と質感を伴った衣装といった具合に、信仰の精神性よりも現世の御利益に着目した人間臭い内実をもったものと指摘できる。






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