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天平時代前期の仏像4:東大寺法華堂不空羂索観音像



(不空羂索観音像)

東大寺法華堂に安置されている不空羂索観音像は、東大寺の前身金鐘寺の本尊として作られた。乾漆材を用い、仏としては最も本格的とされる周丈六(十二尺、約3.6メートル)の大きさに作られている。写実を基本とした唐の様式を踏まえながら、仏の気高さ美しさを理想的に表現した傑作との評価が高い。不空羂索観音とは、「慈悲の羂索を以て衆生を愛護引接し、その心に願うところをして空しくせしめず」との意である。

法華堂内陣仏壇中央に、更に八角仏壇が設けられ、その上に立っている。両眼の外、額の中央にも縦に一眼を開き、胸元で合唱する二腕の外に、6本の腕を伸ばし、三目八臂の形をとっている。

整った顔つき、がっしりとした上体、引き締まった腹部、そしてしっかり構えた足もとなど、人間の理想的な姿が表現されているといえる。

宝冠は銀製で、唐草模様を散らし、正面には化仏を埋め込み、両側面には鏡が取り付けられている。銀の輝きの外に、2万数千個に及ぶという勾玉が怪しい光を重ねている。

光背はいわゆる舟形光背で、舟形の光背を環状に四重に重ね、それと交差する形で42本の光線が放射状に延びている。各交点付近には火焔状の唐草文様を配し、天平時代にしては非常に繊細な感じを出している。

台座は、葵花状八角の框座三枚と平たい敷茄子を組み合わせ、その上に蓮華座をおいている。

作られたのは天平十九(747)年で、本体、宝冠、光背、台座いずれも造営当時のままである。


(同拡大図)






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