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天平時代の仏像4:唐招提寺金堂千手観音立像



(唐招提寺金堂千手観音立像、木芯乾漆、像高535.8cm)

唐招提寺金堂に安置されている一群の仏像のなかでも、ひときわ迫力を感じさせるのがこの千手観音立像である。なにしろ像高535.8cmの巨体である。しかも、堂々たる体躯からは千本の腕が生えて、様々な方向へと伸び広がっている。その中心となる両手は胸の前で会わされ、顔の表情には独特の威厳を湛えている。その威厳が、見る人々を圧倒する。

この像は木芯乾漆造りといって、木で作った枠の上に乾漆を塗ったものである。これだけの巨体が立っていられるのは、足の心木から伸び出た部分を仏壇に穿った穴に嵌め込んで固定してあるためである。背の低い台座は、このはみ出た心木の部分を覆い隠す役目を果している。

全体的な印象としては、自然な均整と調和を心がけているという点で、天平時代の理念に沿っていると思われるが、独自の特徴も見受けられる。条帛や裳の襞の模様に特定の形式的な秩序が見られること、表情にも精神性の強調が見られることなどである。それらは、天平時代から平安時代への移り変わりを感じさせる点である。






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