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天平時代後期の仏像5:聖林寺十一面観音像



(聖林寺十一面観音像、木芯乾漆造、像高209.0cm)

奈良県桜井市の南方、多武峰街道に面した聖林寺の十一面観音像は、天平時代後期の仏像を代表する逸品という評価が高い。この像はもともと大神神社の神宮寺たる大御輪寺の本尊であったものを、明治時代初期の廃仏毀釈運動の折に、聖林寺に移されたものである。

一本造式木芯乾漆といって、頭部から足まで一本の心木で刻み、その上から木屑漆を盛り付けて形を整えている。

体型はすらっとして均整がとれ、肉はやや厚みを感じさせる。一方、表情の方は、物思いに耽っているかのような眼、ぎゅっと引き締まった口、張りのある頬などに、様式的な精神性を感じさせるのは、天平時代後期の仏像の大きな特徴とされている。

天衣、条帛、裳などもふっくらとして物質的な存在性を感じさせ、模様もかなり様式的である。

頭上の十一面のうち、前後左右の十面は菩薩修行の階位である十地を表し、最上部の仏面は仏果を表すとされる。

なお、この写真には見えないが、左手には花瓶をもっている。






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