日 本 の 美 術
HOMEブログ本館日本文化美術批評東京を描く水彩画動物写真 |プロフィール掲示板



貞観彫刻1:神護寺薬師如来像



(神護寺薬師如来像、木造、像高169.7cm)

京都神護寺の薬師如来像は貞観彫刻の初期の傑作である(9世紀初頭の制作)。神護寺は、もともと高尾山寺といって、最澄や空海とも深いつながりがある。空海が唐から帰朝して初めて灌頂を行ったのはこの寺においてである。その折にはこの薬師如来像はすでに寺にあったものと思われる。

この像は、奈良時代の仏像とかなり異なっている。まず、全身がマッシブと言ってよいほど量感的である。分厚さを感じさせる体躯に、これもまた量感たっぷりの衣装がかぶさり、切れ目の深い衣文が、衣装の量感をことさらに強調しているように見える。

頭部もまた非常にマッシブに作られている。とくに盛り上がった螺髪が圧倒的な迫力を感じさせる。面相は重厚さを感じさせる。切れ長の目とギリシャ風の鉤鼻、そしてきりりとしまった唇などは、日本人の表情と言うよりも、異国的な雰囲気を感じさせる。晩唐における密教彫刻の影響があるものと思われる。晩唐の密教彫刻にはインドの影響があるのだが、それが貞観彫刻にも伝えられているのではないか、と思われるわけである。

全身から台座の蓮肉までヒノキの一材から彫り出しており、内刳りを施していない。ただし両腕の半ばから先は、後世の補充である。





HOME密教美術次へ










作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2013-2014
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである