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貞観彫刻3:東大寺弥勒仏像



(東大寺弥勒仏像、木造、像高39cm)

貞観彫刻には、形態を強調するあまりにデフォルメを強く感じさせるものがあるが、東大寺の弥勒仏像はその典型である。像高わずか39センチの小さな仏像にかかわらず、その迫力のゆえに、実物よりはるかに大きく感じさせる。

最大の特徴はその顔である。鋭い目つき、ギリシャ風の鼻、巨大な耳といったぐあいに、それぞれがデフォルメされたイメージを与える。また、やや前かがみになった姿勢は、見るものに襲い掛かってくるような雰囲気を感じさせる。これは、修行を旨とした密教に由来すると思われるが、それが密教寺院ではない東大寺に伝わるというのも面白い。もっとも、密教は奈良時代においても雑密というかたちで一定の普及をみていたわけであるから、東大寺に密教風のものがあっても決して不思議ではない。

弥勒は、本来は菩薩の姿であり、それも半跏思惟像のように深い思索を感じさせる雰囲気が相応しいのであるが、菩薩でありながら仏になることを約束されていたということから、このように如来の姿で表現させることもある。もっとも、その場合にも、この仏像のように荒々しい雰囲気で表現されることは珍しいといえる。





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