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貞観彫刻5:向源寺十一面観音像



(向源寺十一面観音像、木造、像高177cm)

滋賀県長浜市にある向源寺は、現在は浄土真宗の寺であるが、もともとは渡岸寺といって延暦寺の末寺であった。この渡岸寺に伝わった十一面観音像は、密教の影響が色濃く見られる仏像で、貞観彫刻の代表的作品とされ、また日本の彫刻史上最高傑作との評価が高い。無論国宝である。

像本体は一木造りで、台座も本体と同じ材木から作られている。また、頭上の菩薩面は植え付けたものである。髪の部分は乾漆を盛り付けて整えてある。背面には、腰上と腰下とに内刳りが施されてある。

十一面のうち、二面は脇に、八面は頭上に拝し、頂点には大きな観音面を乗せている。通常観音像の頭上の頂点には如来を置くこととなっているものだが、この像の場合には、頂上の観音面のそのまた頭上に如来を置いている。また、この像は、両耳に大きなイアリングをつけているが、これもこの像のポイントのひとつである。

首をわずかに前に傾け、腰を軽く左にひねり、右足を踏み出して立っている姿は、躍動感と安定感が両立している。また、体躯は肉厚で、衣文までが表情豊かに刻まれている。これらの特徴は、晩唐の石仏にも見られるものであり、密教美術の特徴をなすものだといえる。






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