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貞観彫刻9:法華寺十一面観音像



(法華寺十一面観音像、木造、像高100cm)

奈良の法華寺は、総国分尼寺として奈良時代に作られたものだが、本尊の十一面観音像は平安時代になってから作られた。貞観彫刻を代表するもののひとつである。檀像様式の傑作だが、材料にはカヤ材を用いている。檀像様式とは、本来は白檀を用いるが、日本には産しないので、かわりにカヤやサクラなどが用いられた。材質の堅さが特徴である。

高100cmと小振りながら迫力を感じさせる。肉厚の体躯や姿勢のしからしむるところだ。姿勢は腰をやや左にひねり、左足を踏み出してバランスをとっている。また、右腕はひざ下に達するほど長いが、不自然には見えない。その右上の手先でつまんだ衣の裾から裳裾にかけての衣文が、シャープな印象を与えるのは、堅い材質のせいもある。

檀像様式の特徴である素木作りであり、群青色の髪、朱色の唇などのほか彩色を施さない。髪先の部分は銅板でしつらえられ、瞳には金属が嵌められている。天冠上に載っている十面の像のうち頂上のものは、定石に従って如来の面である。

貞観彫刻のなかでは、最も優雅さを感じさせる逸品である。なお、この仏像は秘仏とされ、普段はコピーが観賞用に展示されている。






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