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青蓮院不動明王図(青不動)



(青蓮院不動明王図、絹の掛軸、203.3×148.8cm)

密教絵画では、曼荼羅図と並んで不動明王図が多く描かれた。不動明王は観音菩薩と並んで密教における最も重要な崇拝対象であるが、観音像が奈良時代以前から作られていたのに対し、平安時代になってあらわれたものである。彫刻の形のものと図に描かれたものとがある。図に描かれた場合には、炎を背景にして、剣と羂索を両手にそれぞれ持ち、憤怒の相を見せ、両側に矜羯羅、制吒迦の両童子を控えさせているというのが典型的なものだが、単身であったり、両童子を片側にまとめて描いていたりと、様々なバリエーションがある。

不動明王図としてもっともオーソドックスな形に近いものとして、京都青蓮院の不動明王図が挙げられる。これは、十一世紀に作られたものだが、現存する不動明王図としては、最も古いものに属する。保存状態がよいのは、秘仏とされて来たためである。(現在でも現物は非公開である)

不動明王は画面やや左を向き、白目と白い牙をむき出して憤怒の相を呈している。右手に剣、左手に検索を持った姿勢で、岩石の上に坐し、両側には矜羯羅、制吒迦の両童子を従えている。この三者の織り成す三角形の構図が画面に安定感をもたらす一方、背後で燃え盛る炎が、躍動感をもたらしている。この静と動との見事なコントラストが、この絵の最大の魅力といってよい。






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