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信貴山縁起絵巻3:尼公の巻



(信貴山縁起絵巻:信貴山縁起絵巻3:尼公の巻、31.7×1424.1cm)

「尼公の巻」は、幼い頃に命蓮と別れた姉、信濃の尼公が、生きているうちに弟と会いたいと願って処方を訪ね歩くという話である。訪ねあぐねて、東大寺の大仏に祈ると、夢告をさずかり、信貴山の方向へ行けと指示される。そのとおりに信貴山へ行くと、念願がかなって姉弟が再会できるというものである。

上の絵は、信濃を発った尼公が、市井の一角で休む様子。尼公は、左手に杖を、右手に数珠をもって床机に腰掛けている。その前にかしこまっている男は尼公の従者である。家の入口には、糸を縒る女が尼公となにかを話している。家の右手にはちょっとした畑があって、そこで女が菜を摘んでいる。さらにその右手前には、胸をさらけだした女が、井戸端で洗濯をし、従者の右手には、窓から首を出して、外の犬をけしかけている男が描かれている。


(尼公の巻、奈良大仏殿前)

これは、訪ねあぐねた尼公が、奈良の大仏の前にやってきて、手がかりを請う場面。尼公が大仏の前で転寝をしていると、夢告があって、信貴山の方向へ行けと指示される。大仏は大きく描かれ、その前に尼公が小さく描かれているが、よく見ると、何人もの人間の姿が描きこまれている。

これらは、大仏に向かって拝む姿や、大仏の前で転寝をする姿、そして夢告をもらって旅立つ姿など、同じ画面にさまざまな尼公の姿を描きこんだものである。これは異時同図法といって、同じ画面に異なる時間層の様子を描き入れる技法である。これ以降、供大納言絵詞などにも採用され、日本の絵画のひとつの特徴となっていく。

なお、この絵の中の大仏は、大仏を描写したものとして、現存する最古のものである。







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