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源氏物語絵巻四:鈴虫



(源氏物語絵巻:鈴虫1)

蓮の花盛りの頃、源氏は女三宮の持仏堂の開眼供養を行った。その席上、源氏は女三宮に去られてひとり取り残されることの耐えがたさを訴えるが、三宮は色よい返事をしない。かえって、父君の朱雀帝は、三宮をはやく三条宮に移すよう勧めるほどである。

秋になると、持仏堂の周辺に鳴く虫を放った。十五夜の夕暮れに、女三宮が庭をながめながらお経をあげていると、源氏もその傍らに座って、ともにお経を唱えた。そして、秋の虫の中では松虫がすぐれているが、その松虫はどこかに消えてしまって、鈴虫が心安く鳴いているのは嬉しいというと、女三宮は、「大方の秋をば憂しと知りにしをふりすてがたき鈴虫の声」と歌い、源氏に未練があるようなそぶりも見せるのだった。

この絵は、開眼供養の準備をしているところを描いている。侍女が閼伽棚に向ってなにか作業をし、その背後では女三宮がその様子を見守っている。


(源氏物語絵巻:鈴虫2)

十五夜の名月が上ると、蛍兵部卿宮や夕霧の一行がやってきた。源氏が彼らをもてなし始めると、冷泉院から消息があって、ひとりさみしく月を見ていると言ってきたので、源氏は、その場に居合わせた大勢の人々を伴って、冷泉院のもとに出かけた。冷泉院は、喜んで彼らを迎えた。

冷泉院は、源氏があやまって藤壺に産ませた子である。順調に帝位についたが、年若くして譲位し、いまは静かに暮らしている。その様子が、源氏には哀れ深く思われるのだった。

この絵は、対面する源氏父子を描いている。上座に座っているのが子である冷泉院、その前で背中を見せて畏まっているのが源氏。周囲には、源氏が伴ってきた公達が描かれ、そのうちの一人は横笛を吹いている。







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