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源氏物語絵巻六:竹河



(源氏物語絵巻:竹河1)

竹河の巻は源氏物語の第四十四帖にあたり、源氏を中心に展開してきた本体部分の最後を飾るとともに、薫を中心とする宇治十帖への橋渡しのような位置づけになる。柏木の妹であり、源氏から子どものようにかわいがられた玉蔓の晩年について、玉蔓の侍女の回想という形をとって語られる。その晩年が、薫の十四歳から二十三歳までの期間と重なることから、おのずから宇治十帖への導入としての位置づけを持つわけである。

夫髭黒大将に先立たれた玉蔓には、二人の娘と三人の息子がいた。そのうち、姉娘のほうはたいそう美しく、今上帝と冷泉院からそれぞれ言い寄られていたほか、夕霧の息子の蔵人少将や薫も思いを寄せていた。姉娘は結局冷泉院のもとに参ることになり、院の子どもを生んで順調な生涯のように思えたが、周囲の嫉妬に耐えられずに里帰りしてしまう。一方、妹娘のほうは、母に代わって帝の尚侍(秘書役)として参内し、こちらは気楽な生活を送るようになる。

上の絵は、二人の娘がまだ嫁ぐ前、薫が十五歳頃のことを描く。姉娘に気がある薫は、ある早春の日に玉蔓の邸を訪ねる。すると、薫の美しさに、玉蔓の侍女たちがあれこれと口さがない噂話をする。薫が、玉蔓のいる持仏堂の方へ向かっていくと、庭の若木の梅の木で、まだ花が咲かぬというのに鶯が鳴く。その様子を見た侍女たちが、さらに口さがない噂話に興じると、玉蔓はまじめな人をからかうのはやめなさいといって制止する。彼女の目には、薫が自分の父である致仕大臣や兄の柏木に非常に似ていると映ったのであった。

この絵には、裸の梅の木と、それを横目に見る薫、そして薫について口さがない噂話に興じる侍女たちが描かれている。


(源氏物語絵巻:竹河2)

桜の花が咲くと、二人の姫君が桜の花を見ながら碁を打とうとする。するとそこへ兄の中将がやってきて、桜の木の由来を語って聞かせた。姫たちが幼かったとき、この桜の所有を巡って争ったことがあった。そのとき、父は姉娘の肩を持ち、母は妹の肩を持ったというので、二人は改めて、碁の勝敗で決めようということにした。

この絵は、満開に咲いた庭の桜を侍女たちが眺めている様子を描いたもの。右端の男性は、姫たちを訪ねてきた兄の中将であろう。







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