 （源氏物語絵巻：橋姫） 「橋姫」の巻は、宇治十帖の最初の巻である。成人した薫の恋が描かれる。恋の相手は、宇治八の宮の姫君である。宇治八の宮は、源氏の異母弟であり、したがって薫には義理の叔父にあたるが、出世も出来ずに、どちらかというと不遇の生涯を送っていた。宇治に住む阿闍梨から八の宮の存在を知った薫は、度々八の宮のもとを訪れるようになる。 八の宮には、二人の姫君があった。当初、薫はこの姫たちの存在に気が付かなかったが、ある時八の宮の不在の折に訪ねていった時に、この姫たちの存在に気づく。その優雅な姿に打たれた薫は、姉君と会いたく思い、侍女を介して誘惑しようとするが、姉君は現れず、かわりに弁という尼が現れた。弁はかつて、柏木のもとに仕えていて、柏木と女三の宮の不倫のいきさつや、その結果薫が生まれたことをよく知っていたのである。後日薫は、この尼から自分の出生の秘密を聞くことになる。 そうこうするうち、八の宮は、薫に姫たちの後見を依頼して、息を引き取る。 この絵は、薫が姫たちの姿を始めて見た時の様子を描いたもの。薫が竹垣の隙間から邸の中を覗き込むと、姫たちが琴と琵琶を合奏している。薫は、彼女たちの気品の高い美しさに打たれてしまう。  （源氏物語絵巻：早蕨） 薫とその友人匂の宮は、二人の姫を争った。薫は姉君を、匂の宮は妹君を自分に迎えようと望むが、姉君は薫の望みに応えることなく、若くして死んでしまう。一方、妹君のほうは、匂の宮に迎えられることになる。そんな妹君について、薫は何かと世話を焼くが、そのうち、妹君が姉君に似ていることに気づき、この姫を匂の宮にゆだねたことを後悔するのであった。 この絵は、匂の宮に参ることになった妹君が、引っ越しの準備に余念ないところを描いたもの。侍女たちが荷物をまとめているかたわら、妹君は弁の尼と言葉を交わしている。 |
