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餓鬼草紙1(東京国立博物館本1)



(食小児餓鬼)

後白河法皇ゆかりの餓鬼草紙で今日に伝わるものとしては、東京と京都の両国立博物館収蔵のもの二種類がある。そのうち、東京のものは、詞書を欠いた十枚の絵をつなぎ合わせた絵巻になっている。絵はいづれも、「正法念処経・餓鬼品」に説くところを描いたものと思われる。

上の絵は「食小児餓鬼」、「伺嬰児餓鬼」ともいわれる。生まれたばかりの嬰児を食べるように宿命つけられた餓鬼である。生前、幻術を用いて人を惑わし、財宝を奪い取った報いだとされる。この絵は、出産にかかわる資料としても価値があるとされる。


(食糞餓鬼)

これは食糞餓鬼、あるいは伺便餓鬼。人の排出した便を食うように宿命つけられた餓鬼である。貪欲で物を惜しみ、布施をしなかった報いだとされる。

排便している四人の男女のまわりに餓鬼どもが群がっている。一番左手の男はたったまま糞をたれており、その傍らの鬼が腰をぬかしたような表情をしている。あるいは、その匂いに恐縮しているのかもしれない。一番右手では、裸の子どもがしゃがんで糞を垂れており、その前に大きな餓鬼が立ちふさがっている。手前にいる二匹の餓鬼は、低い体勢でなにかを伺っているが、おそらく、目の前でしゃがんでいる女の排便の様子を盗み見ているのであろう。


(塚間餓鬼)

塚間餓鬼とは、塚(墓)の合間を漂っている餓鬼である。この絵には、五匹の餓鬼が描かれているが、いずれも墓からさまよい出てきた死者の亡霊だと思われる。彼らがさまよっているところは、古代の共同墓地なのだろう。そこには、盛土をした塚や、石で組んだ墓の外、棺に入れられた死体や、野ざらしに置かれた死体、白骨化したものなど、さまざまな光景が描かれている。この時代には、身分の高い者は墓を拵えて貰ったが、身分の低い庶民は、そのまま野ざらしに捨てられたのであろう。







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